この記事は、11月6日の社会保障審議会介護給付費分科会の資料をもとに、11月6日に確かめた内容を書いています。
まだ決まったことではありません。
<悩める人>利用者さんやご家族からの暴言って、結局は現場ががまんするしかないの?



国はすべての介護事業所にカスハラ対策を求めるルールを作る方向で話を進めています。サービスを断れる「正当な理由」の考え方も、はっきりさせる案が出ました。
2026年11月6日、介護報酬(介護サービスの値段や決まりごと)を話し合う国の会議「介護給付費分科会」で、2027年度の改定に向けて、介護現場のハラスメント対策が取り上げられました。厚生労働省が示したのは、カスタマーハラスメント(利用者や家族などからの度を越えた言動。以下カスハラ)への対策を、介護事業所のルールにしっかり書きこむ案です。
訪問でも施設でも、職種を問わず関わる話です。一方で、認知症の症状による言動をどう考えるか、サービスをやめたあと利用者さんはどうなるのか、といった難しい点も残っています。今回の案の中身と、まだ決まっていないところを順に見ていきます。
- 全ての介護事業者に、カスハラ対策を「講ずべき措置」として運営基準に書く案が出た
- サービス提供を断れる「正当な理由」の考え方を、解釈通知などで明確にする案も出た
- 認知症などによる言動は背景をふまえて対応し、危険があるときは安全を優先する考え方を示す案
- どれも案の段階で、くわしい中身はこれから決まる
カスハラ対策は「望ましい」から「講ずべき」へ
「うちの事業所にも何か決まりがあったっけ?」と思った方もいるかもしれません。いまの介護の運営基準(事業所が守る決まり)では、セクハラとパワハラの防止は事業所が「講ずべき措置」になっています。一方でカスハラへの対応は、運営基準の解釈通知(基準の読み方を示した国の文書)で「講ずることが望ましい取組」とされてきました。
ここで大きいのが、2026年10月に施行された改正労働施策総合推進法です。介護事業者を含む全ての事業主に、カスハラを防ぐための雇用管理上の措置が義務になりました。こちらはすでに決まって動き出している話です。
これを受けて厚生労働省は、全ての介護事業者に、カスハラへの対応も運営基準で「講ずべき措置」として位置づける案を示しました。具体的な中身は、法律にもとづく指針などをふまえて、解釈通知で明確にする案です。


「書類が増えるだけでは?」と感じる方もいるでしょう。案では、未然防止と発生時の組織的な対応について、事業所としての基本的な考え方を解釈通知などで示すとしています。現場の職員ひとりに任せず、管理者などが関わって事実の確認や記録、職員への配慮を進める方向です。



ひとことで言うと、カスハラは「できればやってね」から「やるべきこと」へ格上げする案です。
サービスを断れる「正当な理由」を明確にする案
介護サービス事業者は、運営基準で「正当な理由なくサービスの提供を拒んではならない」とされています。ところが、暴力や著しい迷惑行為があったときに、どこまでが「正当な理由」なのかは分かりにくいままでした。
今回の案は、提供拒否の禁止における「正当な理由」の考え方を明確にするというものです。あわせて、サービスを始めたあとに続けるのが難しくなった場合は、状況に応じて段階的に対応を考えることを、解釈通知などに書く案になっています。



じゃあ、ひどいことをされたらすぐに契約を切れるようになるの?



厚生労働省の資料では、すぐに中止や契約解除をするのではなく、状況を確かめて対策をとり、必要なら関係者とも相談して、続けられるかを考えることが大切だとしています。


なお、国の「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」には、いまでも「正当な理由」を考えるときの目安があります。ハラスメントによる結果の重大さ、くり返すおそれ、契約解除のほかに防ぐ方法があるか、契約解除で利用者が受ける不利益の大きさ、などを考える必要があるという内容です。今回の案では、こうしたマニュアルの考え方もふまえるとしています。
「結局どんなときなら断れるの?」という具体的な線引きは、まだ示されていません。判断や対応のくわしい中身は、今後の調査研究を通じて具体化し、マニュアルに反映するとされています。
認知症などによる言動はどう扱うのか
現場で一番迷うのは、ここかもしれません。介護への抵抗や暴言、暴力が、認知症などの病気や障害の特性、まわりの環境が原因で起きることがあります。
厚生労働省の案では、こうした言動はすぐにカスハラとして扱うのではなく、背景や要因をふまえて対応するとしています。そのうえで、職員に危険が及ぶおそれがあるときは安全確保の対応をとること、判断が難しいときは職員個人に任せず事業所として考えることを、解釈通知などで明確にする案です。





たとえるなら、熱で体がつらい人の言動と、わざと困らせる言動を同じ物差しで測らない、ということ。でもどちらの場合も職員の安全は守る、という2本立ての考え方です。
同じ日に示された調査(速報値)では、病気や障害の特性による言動と、カスハラとして対応すべき言動の区別が難しいと答えた施設・事業所が68.8%にのぼりました。多くの事業所が同じところで迷っている、と分かる数字です。
訪問の安全と地域の連携
利用者さんの家でひとりで対応する訪問の仕事は、とくに不安が大きいですよね。いま訪問介護と訪問看護には、暴力や著しい迷惑行為があるときなどに複数の職員で訪問すると評価される加算があります。ただし利用者の負担が増えるため、利用者や家族の同意が条件です。
今回の案では、この同意の条件は引き続き残すとしています。ケアマネジャーの居宅介護支援については、新しい加算をつくるのではなく、モニタリングで自宅を訪ねなくてよい「特段の事情」の扱いなど、運営基準での対応を検討する案です。
調査の速報値では、訪問を伴うサービスなどで、カスハラ防止のための複数名訪問の状況は次のとおりでした。
| 複数名訪問の状況 | 割合 |
|---|---|
| 実施している | 18.0% |
| 過去にしたが今はしていない | 19.3% |
| 実施していない | 58.9% |
事業所だけで抱えきれない事案については、市町村や地域包括支援センター、ケアマネジャー、医療・福祉の専門職、警察、法律の専門職などと連携して対応を考えること、ふだんから相談先を確かめておくことも、解釈通知などに書く案です。市町村の役割は、運営基準とは別に検討を進めるとしています。防犯カメラや複数名での同行訪問などを補助する国の事業も、2027年度予算の概算要求(各省が出す予算の要望)に13億円が盛りこまれています。
調査で見えた現場の備え
「ほかの事業所はどこまで準備しているの?」と気になる方へ。国の調査研究(速報値)で、936の施設・事業所が答えた結果があります。


管理者などが事実関係を確かめて方針を考える体制がある所は72.1%でした。それに対して、初動対応の手順を決めている所は39.0%、契約解除などを判断する手順を決めている所は15.4%にとどまります。契約のときにカスハラについて説明を「実施していない」所も25.4%ありました。
「人はいるけど、決まった手順はまだ」という事業所が多い様子がうかがえます。今回の案が形になれば、こうした手順づくりが進むきっかけになりそうです。
委員の意見と報道の受け止め
ここからは、会議の委員から出た意見です。厚生労働省の案とは分けて読んでください。資料には、これまでの分科会で出た意見を事務局が整理した物が載っています。
- サービスを中止できる具体的な「正当な理由」や事例を、国が分かりやすく示すべき
- 中止したあとは、行政や保険者が次のサービスの受け皿を確保する仕組みが必要
- 安全のために必要なら、利用者や家族の同意がなくても複数名訪問ができる仕組みを検討すべき
- 認知症のBPSD(行動・心理症状)による言動を、一般的なカスハラと同じに扱うべきではない
- 研修や相談体制などの取り組みを、介護報酬で評価すべき
複数名訪問の同意については、委員の意見と今回の案で向きが分かれている点に注目です。介護の専門メディアの報道では、会議で判断基準や事例を示すことを求める声、自治体の関わりを求める声などが出たと伝えられ、厚生労働省は意見をふまえて詳細を詰める方針だとしています。



意見がいろいろ出ていて、どれが決まったのか分からなくなりそう……



委員の意見はあくまで意見で、決まったことではありません。どこまで反映されるかは、これからの議論しだいです。
- 「正当な理由」にあたる具体的な場面や線引き
- 運営基準や解釈通知に書かれる具体的な文言
- 新しいルールがいつから始まるか
- サービス終了後の受け皿など、市町村の役割
- 運営基準:介護事業所が守らなければならない、人員や運営についての国の決まり
- 解釈通知:運営基準をどう読み、どう運用するかを国が説明した文書
- 提供拒否の禁止:正当な理由なくサービスの提供を断ってはいけないという決まり
- BPSD:認知症の行動・心理症状。不安や混乱から出る言動などのこと
まとめ:介護のカスハラ対策は全事業所のルールへ
2027年度の介護報酬改定に向けて、厚生労働省は、全ての介護事業者にカスハラ対策を求めることと、サービスを断れる「正当な理由」の考え方を明確にすることを提案しました。認知症などによる言動は背景をふまえて対応しつつ、危険があるときは職員の安全を守る、という考え方もあわせて示されています。
どれもまだ案の段階で、具体的な線引きはこれからです。まずは自分の職場で、困ったときの相談先や初動の手順が決まっているかを確かめてみるのもよさそうです。



ひとりで抱えこまず、組織と地域で守る。今回の案の芯はそこにあります。続きの議論が出たら、またお伝えしますね。
出典
出典:厚生労働省ホームページ「第274回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料」を加工して作成
出典:厚生労働省ホームページ「資料5 介護現場におけるハラスメント対策」を加工して作成
この記事はAI(Claude)が公式の資料をもとに下書きし、運営者が内容を確かめて公開しています。









